富士通時代のOASYS原稿から復元中であるが、一部旧版のままである他、図版等散逸しており出版された論文集 (大石泰彦教授古希記念論文集「現代経済学の諸問題」下巻 東洋経済新報社) の文章と異なっていると思われるが、大意は変わらない筈である。 論文集自体は、東京情報大学の図書館に寄付してしまい手元にないので、当分の間、このままにしておく。


       知識労働の生産性革新のための一考察

                               関口益照


               目 次


         1.はじめに


         2.知識労働とは何か

          1)一般的な概念とその限界

          2)知識労働の新しい概念


         3.生産性とは何か

          1)一般的な概念とその限界

          2)生産性の新しい概念


         4.知識労働の生産性革新をどう進めるか

          1)従来の概念とその限界

          2)労働プロセスの新たな分析枠組


         5.おわりに


          

         

         


1.はじめに


2.知識労働とは何か



1) 一般的な概念とその限界  


 知識労働の生産性を論ずるためには、まず、知識労働とは何かを明らかにしなければらない。そこで、これまでに知られている分類概念の中から、間接労働,オフィス労働,知識・サービス労働の3つを取り上げ、生産性革新の分析手段としての有効性を検討してみよう。


@ 間接労働

 生産労働を直接労働と間接労働に2分する考え方は、生産労働の大部分が直接の製造工程で投入されるので、それ以外の労働すなわち間接労働は、附属的ものとしてオーバーヘッドコストに吸収して差支えないという前提に基づいている。 

 しかし、この前提は今日2つの要因によって崩れつつある。1つは、製品企画,開発工程の複雑化と製造工程の自動化により、全生産労働に占める間接労働の比重が増す一方、直接労働の比重が低下していることである。また、もう1つの要因は、製品の多様化が進んだことにより一品種当たりの製造ロットが減少し、1製品当たりに占める開発コストの比重が増大しつつあるということである。   

 以上の2つの変化が示唆するところは、いまや、従来、非生産的な労働と見なされてきた間接労働をさらに分解し、その中に含まれる生産的労働を顕在化させるような新しい分類法が必要になっているということである。    


A オフィス労働

 オフィス労働という概念はその定義からいっても、また、歴史的に見ても、もともと労働をその実態によって分類しようとしたものではなく、企業内の部門業務の単位で捉えるところに特徴がある。したがって、生産性革新という観点から見ると次のような2つの問題を抱えている。

 1つは個々の部門に属する多様な労働が区別されないことであり、これは職務分掌が曖昧な我が国の場合、特に労働の実態との乖離を大きくする原因になっている。もう1つの問題は、ホワイトカラー労働の多くが部門間をまたがるチームワークで行われている現在、部門単位で仕事を分析しても最適解が得られるとは限らないということである。

これら2つの問題点の示唆するところは、オフィスにおける仕事を部門や場所から切り離し、仕事自体の属性や機能に即した分類法を考える必要があるということである。


B 知識・サービス労働

 ピーター・F・ドラッカーは、最近の論文(注1)で、物造りと物の移動という物財に関わる労働に対して、知識労働およびサービス労働という概念を提唱している。

 この概念は、従来、間接労働などの表現で脇役視されてきた仕事を、生産性革新の主役として取り上げたこと、また、組織構造と仕事を分離して、仕事そのものを問題にしていることの2点で注目に値する。ただし、その生産性に対する考え方は、課業(Task)の明確化と効率的なチーム編成という経営管理的側面を重視する一方、技術については道具(Tool)としての限界を強調しているような印象を受ける。

 しかし、知識労働やサービス労働の革新が単なる手際の良し悪しレベルの改善で達成されるとは思われない。革新と言う以上は、そのような属人的な手段の限界を越えるシステムの実現をめざすべきであり、そのためには知識労働やサービス労働の機能や構造をとらえた定義が必要となる。


2)  知識労働の新しい概念

 前項での考察により、知識労働に関わるこれまでの諸概念は、いずれも技術革新という観点からは不十分ないし未分化であることが明らかとなった。 

 そして、その問題点は、以下の2点に要約される。第1点は、仕事を仕事そのものでなく、場所、組織、人、目的などの代理概念で捉えていることである。そして、第2点は、仕事の機能や属性を反映した概念ではないということである。 

 そこで、この機能と属性という2つの要素を軸とする座標上に、これまでの概念を配置してみたものが図1である。これによって、性格の異なる仕事が明確に区分され、それぞれについて、生産性を向上させるための技術要素の相違が鮮明になる。 

 そこで、本稿では知識労働を図1に基づいて「情報財を創造的に操作する労働」と定義することにする。これは、ドラッカーの言う知識労働と結果的に一致し、また、情報経済学者の言う情報労働のうち、ルーチンワークを除いた部分にあたると考えてよい。   



3.知識労働の生産性とは何か


1) 一般的な概念とその限界


 生産性とは、一般に投入と産出の量的な比率と理解されている。この概念のもとでは、投入量および産出量は物量として測定されるものであり、したがって価格変化によっては影響を受けない関係値であるとされている。

 しかし、この概念を2.で定義された知識労働−「情報を創造的に操作する労働」にあてはめようとすると、直ちに次のような2つの問題にぶつかることになる。1つは生産物の定義であり、もう1つはその測定方法である。

 そこで、この問題に関する従来の概念を再検討し、新たな生産性概念の定義を試みる。


@ 投入産出分析によるアプローチ

 マクロ経済の分野では、マーク・ポラトらが、既に1970年代に、投入産出モデルを非物財生産部門(情報財生産セクター)にまで拡張することによって、情報労働による付加価値生産額の分析を行っている。(注2)

 このアプローチを知識労働の生産性革新という観点から見た場合の意義は、従来、国民経済的にも間接部門と見なされてきた情報労働を物財生産部門に対する情報生産部門として独立させたこと、また、それに関する投入と産出の定量的な測定を行い、それが、GNPの過半に達していることを明らかにしたところにある。


A IEによるアプローチ

 オフィスあるいは事務部門におけるIE(Industrial Engineering)手法の導入は、工場におけるそれ以上に合理化すなわちコストダウンを目的として進められた。それは、これらの部門が100%経費部門であり経済的価値のあるものは何も生産していないという前提のもとでは当然の事である。そして、オフィスにおけるコストの大半が人件費であることから、コストダウンはそのまま省力化、省人化と同一視されることになる。 

 しかし、このアプローチは、上述のようにオフィスを工場(事務工場)と見たてる発想に起因する2つの問題を抱えている。

 1つは、分析の対象がどうしても目で見てストップウォッチで測定できる作業に限定されてしまうということであり、また、もう1つの問題点は、産出側の効果の測定を取扱件数のような数量の増加によって捉える考え方が一人歩きし、それが最終的な利益の増加に繋がっているのかどうかという検討がなおざりにされがちだということである。


B OAによるアプローチ   

 OAは、もともと定常、定型的な業務の合理化が一般化した段階で、それによってカバーされない非定常、非定型的な業務の合理化を目指した概念であった。

 したがって、OAによる生産性向上への取り組みにおいては、当初から定性的効果(有効性)が定量的効果(効率)と並んで重要な評価基準となっている。そして、このことはオフィスワークの全てが単なる経費的労働ではなく、少なくともその内のある部分は生産的労働の一種であるとの認識を広めることにもなったが、その反面で、いたずらに根拠の乏しい定性的な効果を列挙してコスト分析をおろそかにするという弊害をもたらすことになった。 


C 情報システム論によるアプローチ

 米国の経営大学院や情報システムコンサルタントの間では、情報の価値を評価するための基準としてインフォメーション・ペイオフ(Information Payoff)という概念が一般化している。(注3)これは、その情報によって得られる利益の増分とその情報の獲得の為に費やした総費用との差(差し引き、見返り)という意味であるが、その基本的な発想は、生産性を効率性で捉える伝統的なアプローチに対して、有効性で捉えるアプローチを重視しているところにある。

 しかし、それにしても依然として情報の価値を具体的にどう測定するかという問題が残る。


2) 生産性の新しい概念


 上述の通り、知識労働の生産性を捉えるという観点から見ると、従来の諸概念にはいずれも限界があることが明らかである。問題は次の2点に要約されよう。

 第1点は、知識労働の投入に対する産出が何であるかの定義が確立されていないことである。

 そして第2点は、仮に産出の定義が可能だとしても、知識労働の非定常性、非定型性の故に投入と産出の間の関係の特定が困難であり、従って投入産出分析やIEの手法では測定困難だということである。

 そこで、このような困難ないし混乱が生じている原因を考えてみると、それらがすべて基本的には図1における第3象限(物に対する手続き的労働投入)から第1象限(情報に対する創造的労働投入)へのシフトによって生じている現象であることがわかる。すなわち、投入、産出ともにその量を認識する手段として介在していた物財が、もはや存在しないことで生じた現象なのである。したがって、上記の2つの問題点を解決するためには、物の介在なしに投入労働を特定する方法を見つけなければなら

ない。図2は、以上の観点から物的生産における生産性概念と知識労働におけるそれの関係を示したものである。

このフレームワークに基づき、本稿では知識労働の生産性を「情報の操作に投入される労働量とそれによって産出される情報財の価値との比率」と定義することにする。

 しかし、この定義が有効であるためには2つの条件が必要である。すなわち、 @ 情報の操作時間が測定可能であるということ、及び、 A 情報財の価値が測定可能であることの2点である。前者は技術革新に関わる問題であり、本稿の4.で具体的に試案を示したい。一方、後者は管理的ないしは制度的問題であり、経済学者による解明に期待したい。 



 

4. ホワイトカラー労働の生産性革新をどう進めるか


 知識労働および労働生産性に関するこれまでの考察によって明らかになったことは、全生産労働に占めるホワイトカラー労働の比重が著しく増大しているにも関わらず、その生産性を測定し、分析するための基本概念がまだ確立されていないということである。 

 第1に知識労働の概念自体、物的生産労働に対する情報生産労働としての位置づけがなされているだけで、その非定常性,非定型性および多様性を考慮に入れた分類概念はまだ提案されていない。

 また、その生産性概念にしても有効性やペイオフといった計算概念の域にとどまっており、伝統的な工業生産における大量生産や省力化のような実行手段の概念(方法論)を欠いている。

 そしてこれらに共通する問題点は、生産プロセスおよび、それと不可分の要素である技術からのアプローチがなされていないということである。

 そこで本章では、まず、1)で、労働と技術の接点として労働プロセスの概念を導入して、伝統的な仕事の分類概念を吟味し、次に、2)では、それをベースに新たな分類概念の確立を目指す。さらに、その分類に従って、それぞれにおける生産性革新の方法を示すこととする。


1) 従来の概念とその限界 


 生産労働をその投入プロセスの性格によって規定する分類枠組みとしての労働プロセスという概念が、明確な形で提案された例はまだ見当たらない。しかし、労働の投入は、つねに何らかの目的と手段に結びついた仕事として行われるのであるから、その目的や手段による仕事の分類という形では、従来から暗黙のうちに労働プロセスの分析がなされてきたと考えられる。

 そこで、この課題に関連すると考えられる従来の分類概念を再検討することにより、新たな分類枠組構築のための手掛かりを探ることにしよう。  

 ここでは、代表的な仕事の分類概念として、直接業務/間接業務、Plan−Do−See,および構造化業務/非構造化業務の3つを取り上げることにする。


@ 直接業務と間接業務  

 直接業務と間接業務という分類は、労働の対象となる仕事を直接部門の仕事と間接部門の仕事に分けただけのことであるから、労働プロセスという概念とは一見無関係であるように見える。

 とは言え、この分類が仕事の分類として何らかの意味を持つ以上、それに対応する何らかの労働プロセスを前提としている筈である。  

 結論から先に言うと、この分類の本質は、知識労働を財の生産プロセスにおける直列の工程分業の構成要素とは見なさないというところにある。従って、この考え方のもとでは、知識労働の費用が生産される物財の価値と比較して無視しうる大きさにとどまる限り、その細部にわたる分析は不用となる。

 しかし、最近のように、多品種少量生産から変種変量生産へ、さらには個品生産への生産構造の変化によって、製品のライフサイクルの中で投入される知識労働の比重が増大してくると事情は一変する。なぜなら、この過程における知識労働の増大は、単に製品のコスト構造を変えるだけでなく、マーケティングや設計の巧拙如何によっては、製品の価値そのものに決定的な影響をおよぼすからである。したがって、今後は、知識労働を生産工程の重要な構成要素として位置づけるような新しい概念が不可避であろう。


A Plan−Do−See

 1つの仕事をPlan(計画)、Do(執行)、See(成果分析)の3つのフェーズに分割する考え方は、企業や組織の機能を説明する際に、もっとも一般的に使われる分類法である。 

 労働プロセスという観点から見たこの概念の特徴は、知識労働が仕事のプロセスの重要な構成要素として明示されていること、つまり、仕事というものを物的労働と知識労働の連鎖として捉えているということである。その点において、上述の直接,間接という捉え方よりも、労働プロセスの分析用具としては一歩進んだものと言えそうである。

 しかし、この分類法には、組織の機能や役割を説明することはできても、仕事そのものの属性や手段という技術的要素との接点を持たないという弱点がある。結局、それは、この概念が目的概念であることに起因する本質的限界である。

 従って、本稿の主題である生産性の測定と分析の手掛かりとしては、仕事そのものの構造に、より直結した手段ないし方法の概念が必要と思われる。


B 構造化業務と非構造化業務

 組織における仕事を、その目標と方法が細部にわたって明確なもの(構造化された業務)と、逆にそれが不明瞭なもの(非構造化業務)および、その中間的なもの(半構造化業務)に分類する考え方は、経営意思決定論における構造化問題(Well-structured Problems)、非構造化問題(Unstructured Problems)、および半構造化問題(Semi-Structured Problems)の応用であり、情報システム設計者の間で広く使われている。この分類法は、組織の全業務を対象にしていること、また、それらを一種の属性で分類しているので技術との接点を持ちうることの2点で、 1 2で述べた2つの分類概念よりも、さらに強力な分析用具になりそうに見える。しかし、この分類法の決定的な弱点は、Plan−Do−Seeのようなプロセスの概念を欠くこと、および、その属性分類が仕事そのものの本源的属性によるものでなく、その時点での技術水準を反映したものに過ぎないことの2点である。情報技術者の間で概念としては膾炙しながら、実際の用具としてはあまり活用されていない理由もその辺にあると思われる。


2) 労働プロセスの新たなフレームワーク


 前述のように知識労働をそれ自体に内在する本質的な属性で分類し、それを手段やプロセスに関連づけるような概念はいまのところ見当たらない。

 しかし、これまでの作業によって、問題の所在と解決すべき2つの課題を明らかにすることができた。1つは、知識労働を含む情報労働の属性とその投入プロセスを何によって捉えるかであり、また、もう1つは、どうすれば技術との接点を見出すことができるかということである。これらは、要するに、誰が(労働投入),何を(労働目的,産出),どのように(技術,プロセス)生産するかという生産システムの基本モデルを考えることに帰着する。

 そこで、この生産システムの3つの要素を手掛かりにして、労働プロセスの分類概念を探ることにしよう。 


@ 誰が(労働投入) 

 知識労働のプロセスとその他の労働プロセスの基本的な相違点は、個人の創意工夫の余地がどれだけあるかということである。もちろん前者では大きく後者では小さい。しかし、知識労働における個人の創意工夫のあり方は、その仕事が集団作業(チームワーク)なのか、個人作業なのかによって大きく左右される。そこで、この集団・個人の区分を労働投入プロセスの分類キーとして採用することにしよう。   


A 何を(労働目的,産出)

 産出(労働目的)から見たとき、その他の労働との決定的な相違は、前者が新たな情報の創造や未経験の問題の解決など、質的課題の達成を目的とするのに対して、後者は、既存情報の複製や同一作業の反復による量的成果を目的としているということである。そこで、この質・量の区別を労働目的の分類キーとして採用することにする。  


B どのように(生産技術)

  @、Aの結論に基づいて,労働投入プロセスと労働目的の2つの要素を組み合わせると図3に示すような4種類の労働プロセスが定義される。 

 そして、これら4種類の労働プロセスにおける技術との接点をどう捉えるか、そして生産性革新のためにはどのようなシステムがありうるかを検討した結果を図4に示す。以下、それぞれについて、妥当性を吟味してみよう。


()工程分業 

 これは集団レベルで与えられた量的な課題を遂行する労働プロセスである。まず、集団レベルの成果が問われるということは、構成員1人1人の効率化ではなく集団によるプロセス全体の効率化が第1目標となることを意味する。次に、量的な課題であるということは、複製か反復的な労働であることを意味し、従って、プロセス全体のシステム化が可能である。以上2つの条件から導き出される結論は、システムによる人の代替、すなわちオートメーションシステムの導入に帰着する。


()機能分業 

 これは、集団レベルに与えられた質的な課題を遂行する労働プロセスであり、わが国のホワイトカラーの低生産性が指摘されている部分である。()と同様に考えていくと、チームワークの効率を上げるような環境をシステムで支えることが第1目標となる。これは、システムによる仕事のコーディネート、すなわち、いわゆるコラボレーションシステムの導入という結論に到達する。 


()創意工夫 

 これは、個人レベルの量的課題を遂行する労働プロセスである。個人レベルの量的課題とは、セールスマンの成績のように、1人1人の成果を最大にすることが全体を最大にするような仕事である。従って、個人がもっとも効率的に働けるようなプロセスをシステム化し、それによって個人の能力を補強・拡大すること、つまり、いわゆるエキスパートシステムなど適切な業務支援システムの導入が求められるということになる。   


()試行錯誤

 これは、個人レベルでの質的課題を遂行する労働プロセスである。つまり、経営者や研究者のように、戦略的あるいは政策的な目標のみを頼りに、そのゴールとプロセスを模索する作業である。従って、その効率的かつ効果的な遂行とは、ゴールおよびプロセスの選択における試行錯誤の極小化にほかならない。そのためには、システムによる情報アクセスとコーディネーションが必要であり、それは、各種メディアを融合させた超高度(ハイパー)コミュニケーションシステムの実現によって可能となろう。


3)グループウェアによるグレークスルー


 以上の考察により、図3および図4で示す労働プロセスの分類枠組みが、現在および近い将来における知識労働の生産性革新に関わる新技術との接点を持つことが確認されたと考える。

 そこで、残された課題は、いかにして知識労働の生産性を測定するかということであるが、その鍵を握っているのは、現在、抬頭しつつある新しいタイプのシステム技術、すなわち、上述のコラボレーションシステムやハイパーコミュニケーションシステムである。一般にグループウェアと総称されるこれらの技術は、情報システムが、図5に示すように、集中処理から分散処理へ、また、インフラ型システムから個人型システムへと変化する趨勢の中で実用化されつつあり、21世紀を待たずに普及期を迎えるものと予想されている。 

 こうした技術が普及すると、知識労働は基本的にワークステーションとネットワークを通じて行われるようになり、その結果、仕事の流れとその成果、つまり、労働投入とその産出が、すべて情報システムの中に自動的に記録されるようになる。

 そして、そのような環境が確立されると、労働投入のプロセスが見えないという知識労働の厄介な属性が克服され、我々は、情報システムによって可視化された知識労働の流れを定量的にも定性的にも自在に分析することができるようになる筈である。



5. おわりに


 ブルーカラーの生産性革新とは、システム(技術)による労働(人間)の代替であった。それに対して、ホワイトカラーの生産性革新の本質は、人間による技術の支配に他ならない。しかし、このようなコペルニクス的転換は、人々の意識革命なしには起りえない。そして、その実現の鍵は、ホワイトカラー予備軍(子供,学生)に対する情報リテラシー教育にあると思われる。  



(注1)P.F.Drucker,"The New Productivity Challenge",

          Harvard Business Review 11-12,1991

(注2)M.ポラト/小松崎清介監訳,「情報経済入門」,1982,コンピュータ・エイジ社

(注3)Paul A.Strassman/伊坂哲雄訳,「インフォメーション・ペイオフ」,1986,日経BP社 


参考文献

1.関口 益照,「情報技術の進歩と金融システムへの応用」

   1991,「金融研究」第103号,日本銀行金融研究所

2.「ニューオフィスシステム(NOS)に関する調査研究報告書」

1991,日本電子工業振興協会

3.「新たな制約を越える企業システムの構想」

1993,富士通システム総研



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